各種自動車モデルの急激な増加、精緻な成形部品形状、また高強度鋼材やアルミニウムの普及に伴い、プレス成形工程が大幅に複雑化しています。国際競争が激化する中、自動車メーカーは最新鋭の技術を駆使して、高品質成形部品の実現とリードタイムの短縮を目指しています。この問題に対応すべくAutoForm Engineering社では、プレス成形工程の分析的改善に関する革新的なアプローチをご提案します。これにより早期設計段階におけるプレス成形工程の分析的な改善が可能となります。
この分析的工程改善(SPI)では、どの設計パラメータがどの程度まで部品品質に影響しているかを特定できるため、成形工程により深い見識と透明性をもたらします。SPIは複数のプレス成形シミュレーションを自動実行します。シミュレーションの実行中に設計パラメータが変化してゆくため、プレス成形部品の目標品質について集中的に検討できます。シミュレーションでは、例えばわれやしわの解消、あるいは十分な引き伸ばし等、ひとつまたは複数の結果変数に対する品質目標を指定します。このように成形部品に最も影響のある設計パラメータを、早期の設計段階から特定できます。それから設計パラメータに対して必要な調整を行い、同時に、この調整による部品全体への影響をコンピュータのモニタで確認します。この一連の作業によって、成形工程を分析的に改善できます。
例としてインナー・デッキ・リッドのシミュレーションを実行し、トライアル・アンド・エラーに代わる分析的工程改善の実践的な活用について示します。インナー・デッキ・リッドのシミュレーションが完了すると、結果として、われの危険性が高い致命的領域が表示されます。この段階ではまず部品の致命的な領域を確認し、危険性を効率的に解消できる対応策や他の領域への影響を検討します。部品のわれを解消し、成形工程を改善するには、現在値が1800 kNのバインダ力を調整する必要があります。
従来の試行錯誤型のアプローチでは、バインダ力を修正しながらシミュレーションを再度実行します。目標品質を満たすわれのない部品を生産する上で、最適なバインダ力の値が選択されているかをシミュレーション結果から確認します。目標品質に達していない場合は到達するまで、バインダ力の値を新たに調整しながら新たなシミュレーションを実行し続けます。そして最初に目標品質へ達した結果が最適なソリューションとみなされます。トライアル・アンド・エラーのアプローチはシミュレーションを実行するエンジニアの経験に依るところが大きく、また修正にも時間がかかるため、多大な時間を必要とします。そのためより迅速でかつ信頼性の高いソリューションが必要であることは明白です。SPIのアプローチでは、正しく評価された信頼できるシミュレーション結果によって、部品の目標品質に達するまでの時間を大幅に削減できます。
分析的工程改善によって成形工程は大きく向上します。この例では、品質目標としてわれのない部品を選択し、設計変数はバインダ力を選択します。現在値の1800 kNに変数を適用し、1000 kN(最小)から2000 kN(最大)までの範囲を考慮します。そしてこの範囲内でそれぞれ異なるバインダ力が設定された複数のプレス成形シミュレーションを自動実行します。AutoFormソフトウェアでは工程ウィンドウを表示することができ、例えば工程ウィンドウの緑色のシェーディングはわれが解消されたバインダ力の設定、反対に、赤色のシェーディングはわれが生じうるバインダ力の設定を表します。インナー・デッキ・リッドの場合、1000 kNから1240 kNのバインダ力で緑色の工程ウィンドウに達します。そして1100 kNのバインダ力にてわれが発生する致命的な領域がなくなることが、最終結果として特定されました。
SPIにて最適な設計変数値を選択することで、工程の実行可能性が最適化されます。それにより、エンジニアは複雑な部品形状、高強度材およびアルミニウム、厳しい納期や高品質といった高まる要望に対応してゆくことができます。また成形工程に対する理解を深めることで、開発時間の短縮も実現できます。SPIの実行によって製造過程で生じうる不具合を生産前に特定および解決することが可能になります。
分析的工程改善はAutoForm最新リリースのAutoFormplus R7にて簡単に実行できます。このリリースにてすべてのSigma前処理および結果分析機能がAutoForm-ProcessExplorerplusへ完全統合されたため、AutoForm-Sigmaplusの全機能をご利用いただくことができます。そして目標品質を満たす効率の高い設計工程をお約束します。